【手順0】はじめに|一級建築士試験の設計製図エスキス手法

設計製図試験の過去問を見てみると、昔はA3サイズの問題用紙で余白スペースも割とありましたが、今では2倍サイズのA2用紙に「これでもか!」というくらいに情報が盛り込まれていることが分かります。

当然、情報量が増えたことで課題は複雑になってきており、年々と設計製図試験の難易度は上がっているように思います。

具体的に何が難しくなっているかと言うと、間違いなくエスキスです。

  • エスキス
  • 作図
  • 記述

これら3つのパートで製図試験は構成されており、エスキスでは情報整理力と計画力が、作図では一定の表現力を有した建築図面を描く技能が、記述では一級建築士として備えておくべき知識が問われます。

一級建築士の設計製図試験で最も試されるのは、6時間半という限られた時間の中で条件を整理して適切にまとめる能力なので、作図や記述がどれだけ優れていても、プランがまとまっていなければ合格から遠ざかります。

逆を言えば、条件違反のないプランにまとまってさえいれば、作図や記述がそこそこのレベルでも合格できます。

つまり、条件の読み落としや検討不足のないエスキスを目指さなければいけません。

そこで重要になるのが、どのような課題(条件)であっても、決まった手順で解けるエスキス手法をマスターしていることです。


資格学校で教えてくれるエスキスのやり方は解像度が低く、具体的な手順がよく分かりません。

解答例ありきでエスキスの流れを説明されているように感じたり、エスキスからどうやって解答例にたどり着いたのか分からなかったりします。

これは日建に通っていた運営者の体験談ですが、総合資格やTACの受講生からも実際に同じような話を聞きました。

行き当たりばったりのやり方でセンスやひらめきに頼ることが多いので、100%自己流のエスキス手法もおすすめできません。

運営者は1年目の設計製図試験に自己流のエスキス手法でのぞみましたが、3時間以上かかってしまい惨敗しました。


一級建築士の設計製図試験では、オリジナリティのあるプランを求められる訳ではありません。

合格率から単純に考えると、100人中40人の受験生がたどり着く平凡なプランにまとめるべき試験だと言えます。

そして、40人の受験生がたどり着く平凡なプランは、正しいエスキス手法を身につけることで導けるようになります。

繰り返しになりますが、どのような課題(条件)であっても、決まった手順で解けるエスキス手法をマスターすることが合格への近道です。

こんな人におすすめ

  • 設計製図試験を初めて受ける
  • エスキスに苦手意識がある
  • エスキスの手順が決まっていない
  • エスキスの時間にムラがある
  • センスに頼らず理論的に解きたい

資格学校や自己流では身につけることが難しいエスキス手法を、これからお伝えしていきます。

「ゼロから学ぶ2.5時間でまとめるエスキス手法」シリーズでは、1つの手順を1つの記事で詳しく説明しています。

全部で20の手順があるので、この「はじめに」の記事を含めて全21回のシリーズです。

一級建築士の設計製図試験に合格するために、決まった手順で解けるエスキス手法をマスターしたい方は、この講座を参考にしてみてはいかがでしょうか。

エスキス手法の2つのパターン

製図試験の受験生を見ていると、エスキス手法には2つのパターンがあることが分かります。

  • ピラミッド型エスキス(理論的)
  • パズル型エスキス(感覚的)

条件を読み解いて理論的に積み上げていくエスキス手法のことを、ピラミッド型エスキスと読んでいます。

手順さえ決めてしまえば、だれでも同じようなエスキスを作れるという再現性のある手法です。

対して、条件を読み取り感覚的につなげていくエスキス手法のことを、パズル型エスキスと読んでいます。

解答するときの心理状況に大きく左右される手法なので、同一人物でさえ同じエスキスを作ることが難しい一回性が特徴です。

受験生の半数以上、特に製図初受験の人はパズル型エスキスで課題を解いていることが多いですが、一級建築士の製図試験に特有のセンスがないと苦戦する傾向にあります。

決まった手順でエスキスをするメリット

パズル型エスキスが行き当たりばったりのセンスやひらめきが必要な手法であるのに対して、ピラミッド型エスキスは決まった手順で1つずつ条件をクリアしていく手法です。

決まった手順でエスキスをすることには、いくつかのメリットがあります。

  • エスキスにかかる時間が安定する
  • 途中からリスタートできる
  • 条件違反のリスクが少ない
  • 思考力を保つことができる
  • つまずいたポイントを確認できる
  • エスキスを客観的に評価できる

前半の4つは課題を解いている最中のもので、後半の2つは作成した解答を振り返るときのものです。

エスキスにかかる時間が安定する

エスキスにかかる時間が安定していないとミスを誘発してしまい、結果的に不合格につながってしまうことがあるので、時間配分を守れるようになることが重要です。

無駄のないエスキス手法を決まった手順で行えるようになれば、2.5時間でプランをまとめることができます。

もちろん課題の難易度によって所要時間は変わりますが、3時間を超えても全くプランがまとまっていないという事態は避けられるはずです。

エスキスにかかる時間が安定することで実力を発揮しやすくなるのが、決まった手順でエスキスを行う最大のメリットです。

途中からリスタートできる

センスやひらめきに頼ってエスキスを進めていると、行き詰まってしまったときに後戻りすることが難しく、またイチから考えないといけなくなります。

もしくは、時間が足りなくなるという不安から、穴のあるプランだと分かっていても固執してしまうことになります。

決まった手順でエスキスを行う場合は、いくつか手順をさかのぼった途中のところからリスタートできるので、イマイチなプランを捨てる決心をつけやすくなります。

よほど大きな見落としをしていない限りは、1つか2つ前の手順からやり直すことで軌道修正ができます。

条件違反のリスクが少ない

基本的に1つの手順で1つの条件を整理していく手法とすることで、条件の同時処理による見落としを減らすことができます。

製図試験の性質上、どうしても複数の条件が絡み合うポイントはありますが、可能な限りそれぞれの条件を別の手順で処理することで、条件違反のリスクを減らせます。

メリットの1つである「エスキスにかかる時間が安定する」の副次的な効果として、ミスをしてしまう原因のひとつである焦燥感を解消できることもプラスに働きます。

思考力を保つことができる

決まった手順でエスキスを進めると「次に何をするのか」を考えなくてよいので、脳のメモリを節約できます。

その結果、終盤になってもクリアな頭でエスキスをまとめていくことができます。

なるべく頭を使わない作業的な手法にして考える回数を減らしておくと、重要なポイントで思考力を発揮できます。

逆に、パズル型エスキスの場合は序盤から脳の回転がフルスロットルになりがちなので、エスキス開始から2時間も経過すると思考力が落ちてきます。

つまずいたポイントを確認できる

課題を解いたら解答例と見比べると思いますが、そもそもプランが異なるから参考にならないと感じたことはありませんか。

この感覚はあながち間違っていなくて、解答例からエッセンスを学ぶことはできても、自分のエスキスを振り返ることにはあまり役立ちません。

エスキスでつまずいたポイントを確認するためには、下書用紙に思考の痕跡を残しておく必要があります。

1つの手順を踏むごとに下書用紙に検討内容を書いておくことで、エスキスの最中に考えていたことを振り返りやすくなります。

エスキスを客観的に評価できる

完全独学で試験対策をしている場合は該当しませんが、ほとんどの受験生はだれかに解答を添削してもらっているはずです。

そのときに、解答だけでなくエスキスも添削してもらうのが理想です。

決まった手順でエスキスをすると、解答を導くための過程であるエスキスを客観的に評価しやすい形で残せます。

そうすることで、講師と対話するための材料にもなるので、より思考を深めることも可能です。

「ゼロから学ぶ2.5時間でまとめるエスキス手法」について

そろそろ、具体的なエスキス手法が気になっているのではないでしょうか。

全部で20の手順について簡単に内容を紹介しますが、決まった手順でエスキスをする手法を学んでほしいたので、【step.1】から順番に読んでいただければと思います。

ピラミッド型エスキスである「ゼロから学ぶ2.5時間でまとめるエスキス手法」を、ぜひマスターしてください。

この手法を身につけたときには、合格に近づいています。

ゼロから学ぶ2.5時間でまとめるエスキス手法

原型はウラ指導流のエスキス

学科試験から受験していた製図1年目は対策期間が3ヶ月しかなくて、資格学校のエスキスのやり方に疑問を抱きながらも、とりあえず6時間半で完図できるようになることに精一杯でした。

難易度も多少は影響していたと思いますが、課題をやるたびにエスキスにかかる時間が短かったり長かったりで、典型的なパズル型エスキスの沼にはまっていました。

実はそのころに「一級建築士合格戦略製図試験のウラ指導」という本を購入して、ウラ指導流のエスキス手法について勉強していました。

しかし、本だけではすぐに理解することができず、学校の課題にも追われて挫折してしまいました。

製図2年目は、ウラ指導流のエスキス手法を身につけることから試験対策を始めました。

ウラ指導流の本でエスキスのやり方を学び、日建の課題で実践するという形で少しずつ身につけていき、約2ヶ月でマスターしました。

ウラ指導流のオリジナルが合わないところもあったので、自分なりにアレンジしていった結果生まれたのが、イチラボ流エスキス手法です。

ウラ指導流は間違いなくピラミッド型エスキスなので、この手法をマスターすることがエスキスへの苦手意識を克服する糸口になるはずです。

人によって合う合わないはあると思いますが、ウラ指導の本では平成15年からの過去問が標準解答例といっしょに載っているので、それだけでも十分に買う価値があります。

一級建築士の製図試験を受ける人は、必ず持っておいたほうがいい1冊です。

条件の読み取り・整理

建物構成の検討

プランニング

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