一級建築士試験で設計製図の勉強をしているなかで、標準解答例を分析したりトレースしたりするのが重要だと聞いたことはありませんか。
たしかに一理あるのですが、標準解答例を信じすぎると不合格に近づいてしまうかもしれません。
分析してみるとわかりますが、標準解答例とは言っても条件違反があったり、決して望ましいと言えない計画になっていたりします。
つまり、標準解答例絶対主義になってしまうのはリスクが高いのです。
それでは、標準解答例のどこを参考にすればよいかを確認していきましょう。
標準解答例の役割
公益財団法人 建築技術教育普及センターが公表している標準解答例には、A4の資料が一枚付けられています。その資料の内容を一部抜粋したものが、次の文章です。
標準解答例は、試験の透明性を高めるとともに、建築士を志す者に対して、習得すべき知識及び技能(一級建築士として備えるべき「建築物の設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」をいう。)の目安を示す資料として、当センターに設置された試験委員会で作成されたものです。なお、設計条件のうち今回の試験において不十分な答案が多かった「延焼のおそれのある部分」、「防火区画」等に関する一つの考え方をこの標準解答例に示していますので参考として下さい。(中略)なお、標準解答例は、合格水準の標準的な解答例を示すことを意図したものです。
令和2年一級建築士試験「設計製図の試験」標準解答例の公表について
前半に書かれている「習得すべき知識及び技能の目安を示す」と、後半に書かれている「合格水準の標準的な解答例を示す」は、同じ意味と考えてよいでしょう。
中盤に書かれている「設計条件のうち今回の試験において不十分な答案が多かった・・・等に関する一つの考え方をこの標準解答例に示しています」は、減点もしくは一発アウトの項目に対する試験元からのヒントです。
標準解答例で参考にするポイント
一級建築士試験の設計製図において、標準解答例から合否をわけるポイントを分析すると、次の3点が重要であることが分かります。
- 動線
- ゾーニング
- 図面表現
一級建築士試験の設計製図は、動線とゾーニングで決まるとよく言われます。
膨大なデータを持っている資格学校も同じように考えているので、製図コースの講義では動線とゾーニングに重点をおいた指導が行われます。
法令への適合が厳しくなった、正しくは、法令に適合していることを図示しなければいけなくなったことで、図面表現をどのようにするべきかを知っておく必要が出てきました。
合否をわける3つのポイントについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
動線
利用者動線と管理者動線が交錯しないように計画することが重要です。
外部動線はアプローチ、内部動線はゾーニングを適切に設定していれば、問題なくまとめることができます。
ゾーニング
部門ごとにゾーンを分けることを基本とします。
令和2年度の設計製図試験では、ユニット(部門内においてグループ分けされた利用者のかたまり)ごとでのゾーニングも必要でした。
階別ゾーニングがもっとも明確な計画になります。
図面表現
問題用紙で指定される事項が、どのように表現されているのかを確認します。
令和元年度の試験から「法令への重大な不適合等」がランクⅣの要件として明記されているので、特に法令に関係する事項の表現方法は注意して見ておくべきです。
美しい図面が評価される試験ではないことは、頭に置いておくとよいでしょう。